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ジリリリリリン!!
小洒落た金細工の呼び鈴を鳴らすと家の中から「はぁ~い!!」と女性の声が響き、ドアをガチャっと開けて目鼻立ちが整った理知的に見える若い婦人が登場した。
『あら、屍葬士さん。』
「こんにちはセイラさん、今夜の屍葬に関して最終的な確認をしに伺いました。失礼ですが中にお入りしても?」
モナが礼儀正しく挨拶すると、依頼者の女性・セイラは快く一行を中に迎え入れた。
「ユウちゃんとセツさん、早く仲直りしてくれればいいけど・・・」
(俺だってそれが心配で気が気じゃねぇっつうの・・・)
今のユウとセツの関係が、大きな問題の火種になりそうな予感がして、すっかり憔悴してしまったモナとメアの背後で、家のドアがギィィィィィィィィィィ!と音を立てて、バタン!と閉まっていった。
◇◇◇
「ではこれが、今夜の屍葬の大まかな流れになりますので。」
件の屍神をどのように討伐するのか、特に問題なくセイラに説明することができてモナはフゥっと胸を撫で下ろした。
モナから説明を受けたセイラは「どうか、よろしくお願いします・・・」と応接間のソファに腰掛ながら深々と一行にお辞儀した。
皆にはその声が心なしか涙声になっているように感じ取れた。
「それではこれで私たちは失礼します。」
ひとまず打ち合わせを終えたのでセイラの家を後にしようとモナ達が立ち上がった時だった。
「あの・・・」
突然ユウが口を開き、セイラの方を見やった。
どうやら彼女に質問があるみたいだった。
『はい。何でしょうか?』
「不躾なことで申し訳ないですが、セイラさんはその・・・婚約者さんを手に掛けた者は、やはり死を以って償うべきだと思いますか?」
ユウの思い切った質問に皆が目を見開いた。
ただセツだけは眉を微かに動かすだけに留まり、表情の変化はほとんどなかったが・・・
『私は・・・』
皆がセイラの回答を固唾を呑んで待ったが、その心には諦めのような感情もあった。
何故なら、どうせ答えは分かりきっていたから・・・
『・・・そうは思いません。』
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