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「アンタ、誰?」
ニタニタと笑いながら、少女の見つめる女の怪物。少女は部屋の臭いにむせ返りそうになったが、鋭い眼光で目の前の化け物を見つめた。
「あなた、なんでこんな酷いことしたの!?」
「だってさぁ、コイツ、あたしの大切なモノを危うく壊しそうになったんだよ。だから仕返しに、コイツの身体をめっちゃくちゃに壊してやったの。」
少女の質問に、女は屈託ない笑いながら答えた。
「大切なモノ?それって何?」
少女は再び問いかけたが、女は今度はただ首を傾けるのみだった。
「え~と・・・何だったっけ?いや、どうでもいいや、そんなこと。だって今、すごく楽しいもん。」
悦に浸る目の前の化け物に、少女は奥歯をギリっと噛み締めて憤る。
それは彼女の発言からではない。
心優しい少女の心が、強大な力で無理やりにドス黒く禍々しいモノへと変えられてしまっていることを理解してのことであった。
少女の眼には、この女の化け物の本当の心情が全て見えていたのだった。
やがてフゥっと深く息を吸い込み、懐にしまい込んだ剣の柄を握ると少女は口を開いた。
「私があなたを、あなたを待ってる人のところに連れて帰ってあげる。だから、もう安心して。」
女は明らかに不機嫌そうになり、憐れみの表情を向ける少女を睨みつけた。
「アンタの態度、エラそうでなんかムカつく。分かった。コイツと同じように、アンタもズタズタにしてあげるッッッ!!!」
右手にメスを握りしめ、女は少女の方へと飛び込んできた。
少女は咄嗟に懐から柄を取り出し、刀身を展開させると向かって来たメスの切っ先を受け止めた。
そしてそのまま、女の身体を部屋の奥へと押し出した。
「その武器、アンタ、一体・・・」
少女が自分の一撃を防いだことに、女は理解が追い付かずにいた。
人ならざるモノとして甦った自分の攻撃を、生身の人間が弾くなど在り得ないことだったからだ。
「残念だけど、あなたに私は殺させない。どうしてもあなたを救い出すってある人と約束したから。」
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