第陸拾捌話 最後の不葬

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「なるほどねぇ。セツにそんなワケが・・・」 ユウからセツと今回の標的の屍神との因縁を聞かされ、メアはウンウンと頷いた。 「私ね、自分のしていることはセツお姉ちゃんの想いを無視することになるんじゃないかってずっと悩んでたの・・・セツお姉ちゃんにしたら、今回の犯人は屍神になってしまった自分を受け入れてくれた人達を奪った仇で、私がその人のことを生かすことはかえってセツお姉ちゃんを苦しめるハメになるんじゃないかって・・・だけど、今日セイラさんの話を聞いて、やっぱり私はその人に自分の犯した罪をしっかり生きて償ってほしいって思ったの。それがもしかしたら、セツお姉ちゃんのためにも、なるんじゃないかって・・・」 ユウが先ほど見せたセツに対する大見栄の理由が分かったモナとメアは、彼女の一貫した屍神、ひいいてはセツへの慈しさに納得せざるを得なかった。 「やっぱりブレねぇよな、お前って。」 「そう、だね。でもね思ったの。やっぱり私は、屍葬士(このしごと)を続けていくべきじゃない、って。」 ユウの突然の弱音にメアは「えっ。」と思わず声を出して小さく驚いた。 「屍神を殺さないってことは彼女たちによって殺された人達、そしてその人を大切に想っていた人、屍神士(わたしたち)に依頼を出す人達のことをないがしろにすること以外の他ならないって。だから、私、決めたの。」 「って、何を?」 「この依頼を、私の屍葬士としての最後の仕事にしようって。」 「「なっ!?」」 ユウの突然の辞意表明に、モナとメアは驚きを隠すことができなかった。 「それってつまり、屍葬士を辞めるってことかよッッッ!?」 衝撃を受け、冷静さを保てずにいるメアが問いただすと、ユウはゆっくりコクっと頷いた。
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