第陸拾捌話 最後の不葬

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「どうしてですか!?ユウちゃんあんなに、屍神のことを救いたいって思っていたのに・・・」 モナのいつにも増して取り乱した様子を意に介さず、ユウは今の自分の心情を淡々と語りだした。 「そうだね。でも、私がその決意を貫くことによってセツお姉ちゃんみたいに、自分の心の傷をいつまでも治すことができない人が増えていくことになるし、かといって私は屍神を殺すことができない・・・だから、こうするのが一番いいのかなって・・・」 「でもだからってそんな・・・ッ!?」 諦めずユウのことを引き留めようとしたメアだったが、それを突如としてやめた。 ユウが涙を流しながら微笑んで、自分たちにその表情を向けてきたからだ。 「分かって。私ね、もう誰の泣き顔も、見たくなんか、ないんだぁ・・・」 涙ながらにそう吐露するユウだったが、その彼女こそが誰よりも儚く、そして痛々しい泣き顔を見せているように違いないであろうか・・・ ◇◇◇ 一方、別の通りを巡回するセツとカノの両名との間には、ユウ達とはまた違う意味で重苦しい空気が立ち込めていた。 二人の中には会話は一切なく、セツが「見つけ次第殺してやる」と言わんばかりに険しい表情で仇の屍神を探すのを、カノはただ眺めることしかできなかった。 (う~む、何とも気まずい・・・だが拙者は、己の役割を決して見失っては・・・) カノの役割、それはセツに復讐をさせないことである。 先ほどはユウに対して「好きにしろ。」と言ったセツであったが、巡回の組み分けをする際に、セツはユウとともになるのを頑なに拒否した。 なので今、ユウはモナとメア、セツはカノと行動しているのだ。 この時カノは察した。 セツは本気で今回の標的を殺すつもりなのだと。
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