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だからセツはユウと組むのを全力で拒絶したのだった。
口ではああいったが、セツはユウの好きにさせるつもりなど、これっぽっちもなかったのだ。
なのでカノは考えた。
もし自分達の方が例の屍神と遭遇したら、決して殺さずユウの許へと追い立てると。
さすればユウが屍神を捕らえることができるとカノは踏んだ。
それによってセツから口汚く罵られることも考えられるが、カノにとっては友の願いが潰えることがよっぽど恐ろしかった。
本当はユウ達の方に屍神が出てくるのが一番なのだろうが・・・
「ねぇ、あなた。」
セツに突然話しかけられたことにビックリして、カノの一回り小柄な身体がビクッと跳ねた。
「どっ、どうしたのだセツどゅの!?」
焦りからカノの口がつるっと滑った。
「ちょっとお願いがあるんだけど。」
「なっ、何でごじゃるかッッッ!?」
緊張で顔全体で汗をダラッダラかきながら、カノはセツのお願いを聞こうと身構えた。
「私が屍神を殺したことを、ユウに伝えないで。」
「ほぇ・・・?」
考え及ばなかったセツの頼みごとに、カノは間抜けな声を出してしまった。
「もう気づいてると思うけど、私はこの依頼の屍神を殺すつもりでいる。アイツはそれくらいのこと私にして、それがどうしても許すことなんかできないから・・・でも、私が殺そうとしてるヤツは、あの子にとって私と同じくらい救いたいと思うほどの大切な人なんだって気づいたの。私がアイツのことを殺したら、きっとあの子を深く傷つけることになってしまう・・・私は、ユウのそんな顔なんか、見たくない・・・」
「セツ殿・・・ッッッ!!まさか・・・」
その時カノは気づいた。
セツがユウと組むのを全力で阻止したか。
それは仇討ちを邪魔されたくなかっただけではない。
ユウに復讐の瞬間を見せたくなかったのだ。
自らが救いたいと思った存在が、自らの想い人によって殺められる心優しいユウにとって、最悪以外の何物でもないその光景を・・・
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