第陸拾玖話 怨の激突

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第陸拾玖話 怨の激突

目の前の丸顔の屍神を視界に捉えたその瞬間から、セツは全身の細胞が怒りのあまり蒸発してしまいそうな気分だった。 間違いない、やっぱりアイツだった。 かつて、醜い化け物である自分に優しさを、人のぬくもりを思い出させてくれたあの夫婦を惨たらしく殺し、そして尻尾を巻いて逃げ出した憎くて憎くて仕方がなかった屍神(あの女)。 今回の依頼で殺された男性、そして今自分の眼前で殺されそうになった男を思い出してセツは頭の血管すべてが破裂しそうになった。 性懲りもなくコイツは人殺しを重ねてきたのか・・・ 絶対に、許せない。 私がこの手で、始末してやる。 「あっ、ああ、あ・・・」 男はへたり込みながら、突如として乱入してきた少女から目が離せなかった。 「今の内にどこかに避難してください。」 男に視線を向けることもなく、セツは彼に退避を促した。 「ああっ、きっ、君は・・・」 「いいから立ってッッ!!まだ生きたかったら急いでここから逃げろッッッ!!!」 セツの声にドキッとした男はふらつきながらも立ち上がって足をバタつかせながらそこから脱兎のように逃げ出した。 『相変わらず屍神らしからないマネすんのねぇ。』 屍神がニタニタしながらセツの行動を評した。 「お前たちと一緒にしてもらえないでくれる?この人殺し。」 立ち上がったセツが屍神に侮蔑の言葉を浴びせた。 すると、今まで笑みを浮かべていた屍神の表情がスッと真顔へと変わった。 『よく言うわね。アタシの友達の心臓握り潰しておいて。』 彼女の言葉とその表情から、セツはことの仕組みを理解した。 そうか、コイツもあの時、私に仲間を殺されたことをずっと根に持っていたのだ。 その瞬間、セツの頭に恐ろしい推測が生じた。 何故およそ二十年もの間、表に出てこなかったコイツが今になって目立つ殺人を再びしでかしたのか・・・ 「ねぇ、アンタ。アンタが殺しをするようになったのって・・・」 『そうだよ。お前をおびき出すため♪』
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