第漆拾話 両の面影

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ユウの口から衝撃的な一言が飛び出してきて、セツは言葉を失った。 “どうしても復讐を成し遂げたかったら、まず自分を殺せ。” その時セツは思い知らされた。 今のユウは自分の命なんて平気で投げ出してもいいくらいの覚悟で、セツを引き留めているのだと。 果たしてセツには、自分のかげない者までも犠牲にして仇を取るような覚悟があるのか・・・ そんな覚悟なんて、これっぽっちも持ち合わせてなかった。 そんなふざけた覚悟なんてしたくもない。 どうして自分の都合で、離ればなれになりながらも、傷だらけになりながらも自分のことを追いかけてくれた者を、大切に想ってくれた子を殺さなければならないのか。 そんなこと、断じてあってたまるか。 ユウの覚悟を受け止めたセツは、諦めたような表情を浮かべて項垂れた。 「そんなこと・・・できるワケ、ないでしょ・・・」 それはまるでユウではなく、怒りに身を任せるあまり大切な存在が見えなくなってしまった愚かな自分に言っているようだった。 「だったら・・・大人しく、、休んでろッッ・・・!!」 抱いているセツの身体を仰向けにして、涙でグシャグシャになった顔で彼女にそう言うと、ユウはセツを地面にそっと寝かせた。 「セツさん!!」 「セツ殿!無事か!?」 直後、モナとカノがやって来て、慌てふためきながら満身創痍のセツに駆け寄った。 「あ~あ、こりゃひでぇザマだな・・・」 全身が花で覆われたセツを見て、メアは半ば呆れたようにそう言った。 それにセツがそっぽを向くと、メアはムカッとした顔をしながら彼女の頭をはたいた。 「いつまでもユウ泣かせてんじゃねぇよ!!」 その言葉にドキっとする様子をするセツだったが、口をギュッと閉じてまた俯いてしまった。 カノもセツに対して何か言いたげなようで、彼女に叱らんかのばかりの顔を向けたが、ついに何も言うことはなかった。 その顔を見た時、セツは自分が如何に周りの者たちを心配させたか改めて自覚して居たたまれない気分になった。
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