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「で!?ユウの野郎はどうしたよッ!?」
メアが怒った声色でセツに言うと、セツは何も言わずに屍神の許へ向かうユウの方へと目をやった。
喉の傷を押さえて逃げようとする屍神の方へ、ユウは何も言わずに歩いて行き、歩みを進めながら彼女は懐から柄を取り出して斬れない刃を展開させた。
『アンタ、何?いきなり出てきて・・・アタシを助けたつもり?』
屍神は、今自分にしたことと、これから正反対のことのことをしようとするユウを皮肉るように言った。
「もちろんそのつもりだよ。だってあなたには、死んでほしくないから。」
真剣な眼差しでそう宣言するユウに、屍神は世迷言だと決めつけて鼻で笑った。
何故なら、屍神殺しがそんなこと言うはず、ないのだから。
『何嘯いてんの?アンタ今からアタシを殺すくせに・・・』
「殺さないよ。だってあなたは生きて罪を償うべきだから。あなたは本当は、人なんか殺したくないのだから。」
『はぁ?アンタ何言って・・・ッッッ!!』
屍神の脳裏に激しく電流が走った。
その自分の心を見透かしたような物言い。
鮮やかに煌めく翠色の瞳。
まだ幼さが残りながらも、端正に整った目鼻立ち。
風になびく柿渋色の髪。
どこまでも似てる。アイツ等に。
正直これ以上思い出したくなかったが、ユウが放ったトドメの一言で彼女は思い出すことになる。
何があっても思い出さないと心に決めたあの忌まわしき過去を。
「私には分かるよ。あなたの心の底が・・・」
彼女の頭の中に、その情景が鮮明に映し出された。
【自分の心を見透かした屍葬士】と、奴とともにいた【自分とは全く違った屍神】を。
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