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第漆拾壱話 悔恨と決着
このままでは確実に狩られる。
殺される。
生け花の屍神・メイの頭の中はその考えから沸き起こる恐怖で埋め尽くされていた。
剣を右手に構えて自分との距離をゆっくり詰めて来るユウの顔を見れば見るほど、あの夜、自分を殺しかけた屍葬士と屍神の顔が鮮明になってくる。
『やっ、止め・・・来るな!!』
その内メイの目からポロポロと涙が流れ出し、頭は水を飛ばす犬のように高速で横に振られる。
コイツは自分があの夜遭遇した二人ではない。
違う。違うと分かっているのに、怖くて、堪らない・・・
(死にたくない!!死にたくない!!死にたくないッッッ!!今ここで死んだら、アタシは・・・)
「分かるよ。あなたの気持ち。死んじゃったら、もう二度と、友達のことを思い出せないのが怖いってことが。」
『え・・・』
ユウが突然言ってきたことの意味を、メイは理解できなかった。
ところが次の一言で、メイは全てが分かり、そして思い出すこととなる。
「あなたはただ、友達と、もう一度自したいことがやれて、嬉しかったんだよね。」
その瞬間、メイは思い出した。
自分がまだ人間だったころの淡い思い出を。
◇◇◇
生きていた人間だった頃のアタシは、内気な性格で人の輪に入ることが誰よりも苦手だった。
その引っ込み思案な性格のせいで、四十を過ぎても独り身のまま、毎日寂しい思いを抱える憐れな女だった。
そんなアタシを変えてくれたのが、気晴らしのつもりで通い始めた生け花教室で一緒になったシトだった。
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