第陸拾弐話 遠き春

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「おねえちゃんッッ!!」 力無く倒れた女の化け物、否、自分の姉に女の子は急いで駆け寄った。 ピクリとも動かない姉に、女の子は彼女が死んでしまったのではないかと思い、胸が張り裂けそうになった。 ところが、姉の口からか細い声が聞こえ、それを聞き取ろうと耳を近づけた。 「ごめ、、ん、ね・・・ごめん、ね、・・・」 泣きながらうわ言のように自分に謝る姉を見て、サナもまた泣き出して姉の顔に自分の顔を埋めた。 「もうちょっとしたらあなたのお姉さんの面倒を見てくれる人達が来てくれるから、私はもう行くね。」 少女はそう言うとを柄の中に戻し、その場を離れようとした。 「屍葬士(しそうし)さんッ!」 サナに呼び止められ、少女は立ち止まって振り返った。 「ありがとう!!お姉ちゃんを見つけてくれて。」 涙を浮かべながら感謝を伝える依頼主の女の子に、少女は今一度ニコッと笑いかけると再び歩き出した。 外に出ると、夜はすっかり明けたものの、空気は相変わらず凍てつき、地面には昨日の夕方に振った雪がまるで氷みたいになっており、とてもこれが春先の風景に感じることができなかった。 「はぁ、一体いつになったらあったかくなるんだろう・・・」 未だ訪れる気配がない遠い春を待ち焦がれながら、不葬の屍葬士・ユウは朝日が照らす白い森をゆっくりと歩いて行くのだった。
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