第漆拾壱話 悔恨と決着

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だがそのような、ユウの信条を裏切るような頼みなど、当然汲んでやれるはずがなかった。 「さっきも言ったように、私はあなたに死んでほしくない。あなたには、これからも生きてほしいから。親友の分まで、自分が犯したその行いを、生きて償ってほしいから。」 ユウにそう諭されると、メイは落胆した態度を見せて黙りこくった。 ユウは彼女の傍を離れようとしたが、自分たちの許へセツが徐々に動くようになった身体を引きずりながら歩いてくるのが見えて立ち止まった。 「セツお姉ちゃん・・・」 「・・・・・・・・・。」 ユウの呼びかけに一切反応しようとせず、セツはメイの前に着くと項垂れる彼女を見下ろした。 『アンタ・・・』 「一つだけ聞くわ。アンタ、まだ生きたいの?」 『・・・・。アタシは・・・死にたい・・・もう、死にたいよぉ・・・』 力無く呟くメイを見てもセツは表情一つ変えずに一言も発さなかった。 だが次の瞬間、拳を握りしめ、それを以ってメイの胸元を貫こうとした。 「ッッッ!?セツお姉ちゃんッッッ!!!」 ユウの制止を聞こうとせず、セツは拳を振り下ろした。 メイは全てを受け入れてそっと目を閉じた。 (ああ良かった。これでようやく、彼女のところに行ける・・・) だが繰り出されたその一撃はメイの横にある壁に大穴を穿つのみに留まった。 「死にたがってる奴に殺される資格なんてないわ。お前は自分のしでかした行いをいつまでも後悔し続けろ。」 メイは親友とともにいたいと言う本心に気付かず、罪のない人を大勢殺した今の自分にとっては、その親友を殺した当人にそう吐き捨てられるこの瞬間こそが最も当然な報いであるように思って虚しく笑った。 「私も、あなたの親友を殺した罪を、ずっと抱えて、生きて、いくから・・・」 去り際にセツに言われ、メイは声にならない泣き声を上げた。 それは親友を失ったことを改めて思い知ったことによるものなのか、はたまた自分と同じような重責を背負う者がいることへの安心感がこみ上げたものなのか、今となっては知る由もない。 「セツ、お姉ちゃん・・・?」 過去への遺恨に決着をつけ、憎むべき相手に贖罪の機会を与えたセツの後ろ姿をユウは安心しながらも何処かやるせない目をしながら見続けた。
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