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睨み合うメアとカノにマズいと思ったユウが少しあたふたしながら場を和ませた。
「おっ!!そりゃいいね~っしゃあ!!そいじゃここいらで夜桜見物と行きますかッッ!!」
「花見はそのような粗野に生き込んで臨むものではないし、何より桜など一輪も咲いておらぬではないか。」
「ぐぬぬ・・・お前ってヤツはホント口を開けば細けぇことばっかりぃ・・・」
カノの指摘にまたカチンときたメアが、カノに眼を飛ばしてきたので、モナがメアと代わって仲裁した。
その脇でユウはセツを近くの樹の下に休ませて、そそくさと花見の準備をしている。
「ねぇみんな!お菓子出したから早く始めようよ。」
こうしてユウ達は、一足早い夜桜見物を始めたのだった。
「はい、セツお姉ちゃん。」
桜の樹にもたれかかって、何も言わずさらさらと流れる小川を見つめるセツに、ユウは水筒のコップに入った茶を渡してきた。
セツはユウに軽く会釈するのみでそれを受け取ると、中に入った緑茶をぐびっと一口で飲み干した。
「よ、よかったら、お菓子も、食べる?」
セツは首を静かに横に振って断った。
ユウは少しシュンとして、セツの横で持ってきた菓子を無言で頬張りだした。
いつもは大変に美味に感じるイチゴの菓子が、今の彼女にとっては何だか味気なかった。
「ねぇ、ユウ・・・」
先ほどまで沈黙を貫いていたセツが、唐突にユウに口を利いてきた。
「ん、どうしたの?」
「本当に・・・ごめんなさい・・・」
ユウは、急に自分に謝罪してきたセツにビックリした。
「えっ?ちょっと、何が?」
「昨日、あなたに向かって“あなたの誓いはただの身勝手なもの”だなんて言って・・・私、知らなかった。あなたがどんな覚悟でその誓いを守っているかなんて・・・」
セツは死ぬほど反省していた。
まさかユウが、己の命すらも平気で投げ出してでも自らの信条を貫いているとは思ってもみなかったからだ。
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