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落ち込んだ様子を見せるセツに、ユウは自分の回答が至らないものだと申し訳なくなってしまった。
「でっ、でも、そのためだったら私にできることは何でもお手伝いするからッ!」
「うん。本当に、ありがとう。ユウ・・・」
拳を胸にポンと当てながら誇らしげに言ってみせるユウを、セツは頼もしく感じた。
「いいよいいよ全然!それに、私にだって、しなくちゃいけないことができちゃったから・・・」
セツは首を傾げた。
すると、少し離れた場所で休息をとっていたモナ達も、ユウとセツの会話を聞いて傍に寄って来た。
「しなくちゃいけないこととは何ですか、ユウちゃん?」
「私ね、さっきあの人の心の奥を見た時にあの人の過去も一緒に映ったんだ。その時に見たの。私そっくりな屍葬士と屍神を。」
「なっ、何と!?それって・・・」
カノが言おうとしてることが分かっていたので、ユウはゆっくりと頷いた。
「一目で分かったよ。あれは、私のお父さんとお母さんだって。」
ユウの言葉に皆が息を飲んだ。
「私、知りたい。お父さんとお母さんがどんな人達だったか。私のことをどんな風に想ってくれたか。そして、どうして命を落とすことになってしまったか・・・それを知るまで、私はまだ屍葬士を、途中で投げ出すことなんか、できないから。」
「えっ、じゃあそれってつまり・・・」
「心配かけてごめんねモナちゃん。もう辞めるなんて言わないから。」
神妙な表情をガラッと変えて、穏やかになってそう言ってくれるユウにモナは安心した。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。もう辞めるとは一体何のことだ?」
「え、ええ。私もそんなこと、初耳だわ。」
「う~ん、ちょっと、な・・・ユウがさっきオレ達に“この仕事辞める”って言ってきてよ・・・」
「おいそれは一体どういうことだ!?」
カノが驚きの声を上げる一方で、同じく初めて聞くセツは「え、え・・・」と言葉が上手く出せない様子だった。
「なっ、なんかセツのことで思い詰めてるみたいで・・・」
「そうだったの!?ユウったら何でそのこと早く行ってくれないのよ!?」
「え!?だってセツお姉ちゃんとはケンカ中だったし・・・」
「そっ、そうですよ!ユウちゃんだってセツさんに言いづらかったんですよ!」
「そうだとしてもモナ殿、メア殿!!せめて拙者には話してもよかろう!?」
「しょうがねぇだろ、あん時別行動だったんだから!!」
思わぬ事実が発覚したことによる若き娘たちの言い合いは、ここから二時間ぶっ続けで行われたという・・・
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