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20分ほどして、テーブルに座るユウにハキは茶菓子とお茶を持ってやってきた。
お盆に乗った茶菓子を見てユウははち切れんばかりの笑顔をした。
イチゴを水飴で包み込み、そこに砕いた氷をまぶした氷菓子はおそらくユウがこの世で最も愛する食べ物であろう。
お盆を置くと、ハキは深く一礼して受付所に戻っていった。
だが彼女には一つだけ気がかりなことがあった。
ここ三ヵ月ほど、ユウは菓子の皿を二つ持ってくるようにお願いしていた。
初めはてっきり二皿分食べるのかと思っていたが、もう一つの皿はユウが自分の部屋に持って行っていた。
後になって空になった皿を持ってくるので、もう一つは部屋で食べる分だと思ってはいるが、それでもハキは彼女が何故急にそんなことし出したのか、ほんの少しだけ気にはなっていた。
◇◇◇
皿に置かれた菓子を楊枝でついて口に運んでパクっと食べると、ユウは顔をとろけさせた。
口いっぱいに広がるイチゴの酸味と水飴の甘味、そしてわずかな氷の冷気をユウは口の中の五感全てを使って感じていた。
「ん~おいふぃ~♪」
「相変わらず幸せ全開なカオしてソレ食うよなお前。」
聞き覚えのある声が聞こえてきたので、ユウは顔を上げた。
そこには先ほどの荒っぽい声とはかけ離れたほんわかした少女が、手を腰の前に添えて立っていた。
「あっ、モナちゃん、メアちゃん。」
「お疲れ様です。ユウちゃん。」
少女はやはり、先ほどとは打って変わった穏やかな声をユウに掛けていた。
「昨日見ないと思ったら、依頼行ってたんだね。」
「そうなんだよぉ!四日のうちに三件も入っちまってさぁ、ホンっとくたびれたぜっっ!!」
少女はお嬢様然とした口調をガラッと変えて、粗野な喋り方になった。
今話しているのは、ユウに挨拶したおっとりとした少女の双子の姉である。
彼女の身体には、魂が二つ入っているのだった。
「そんなクソ忙しい時におめぇは別な依頼行っちまうし、アイツは実家帰っちまうし、たまったモンじゃねぇよッッッ!!!」
「カノちゃん、どうしたんだろう・・・」
「確か、お兄様と修行するって仰ってました。」
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