帰らないあの日

誰もいない
いつもの廊下

かつてそこにいた
あなたを
私は見ていました
騒めきの中
あなたはいつも
笑顔でした
時折
私とも目が合った気がする
交わす言葉は
ないけれど
あなたの優しさが
私を温かくする

静まり返る
いつもの中庭

かつてそこにいた
あなたを
私は見ていました
太陽の下
あなたははしゃいでいました
私にも微笑んだ気がする
かける言葉は
ないけれど
あなたの笑顔が
私に勇気をくれる

整然と並んだ
いつもの机

かつてそこにいた
あなたを
私は見ていました
物憂げに
あなたは窓の外を眺めていました
私の想いが
伝わった気がする
ふと振り返った
あなたの笑顔が
私を幸せにする

それぞれの時を歩み
変わり続けるあなたは私を忘れていく
変わり続ける私もあなたを忘れていく
過ぎた煌めきを
春の寒風と一緒に
さらりと流して
あの日はもう
帰らない

歩き出す春が
来る度に
私はあの日を思い出す