赤備え

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 赤備(あかぞな)えと呼ばれる武士たちがいた。  その数、およそ百。決して多くはない。  しかし彼らは、ひとりひとりが無双の武芸者であり、一騎当千のつわものであった。  彼らは斬り込みからの乱戦を得意とし、ひとたび敵陣に討ち入れば、誰も止めることはできなかった。  戦の際、彼らはみな赤い小袖(こそで)を着て出陣した。  誰よりも勇猛で誰よりも頼もしい彼らを、親しい者たちは畏怖と畏敬を込めて、赤備えと呼んだ。  誰よりも強靭で誰よりも恐ろしい彼らを、敵たる者たちは恐怖と侮蔑を込めて、血狂(ちぐる)いと呼んだ。
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