一番はじめの出来事

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一番はじめの出来事

 これから俺たちはどうなって行くんだろう・・・。  捲り上がったシャツの中に手を入れ、凱は優輝の身体を撫ぜまわしていた。  凱の膝枕でうっとりと横になって、こうして触られていることに優輝は溢れんばかりの喜びを感じていた。女として生まれて来れば良かった。いや、男として生まれて来て、男として凱を俺は愛した。優輝は複雑な思いに苛まれながらも、一生、凱とこんな関係を続けて行きたいと思っていた。でも、そんなことできるのだろうか。俺よりもっと素敵な男に凱が心変わりしてしまったらどうなるんだろう。俺は凱を殺してしまうかもしれない。殺してしまって俺も一緒に死んでしまいたい。凱と一緒だったら、死ぬことだって怖くない。 「何考えてるの!?」  凱が優しく訊ねてくる。 「凱のこと」 「俺も優輝のことを考えていたよ」 「俺のどんな事!?」 「ずっとずっと優輝と一緒に居られるかなぁ・・・って」 「ずっとずっと一緒に居ようよ、死ぬまで・・・お爺さんになって死んでしまうまで一緒に居ようよ」 「俺たちって変なのかなぁ!?」 「たぶん・・・」 「そうだよなぁ」 「でも、男と女だったら別に篇でも何でもないわけだから、その気持ちは男と女なんかの関係を超越して、存在し合っているんだから」 「恋をした人が男だったというだけだね」 「うん・・・」  優輝の瞳を凱は見つめた。優輝の顔が凱の瞳に映っている。優輝は凱の唇に吸い付くように伸びあがった。それを凱が強く抱きしめ覆いかぶさった。  いつか大人になったら・・・いつか別れが来てしまったら・・・そのことを考えると優輝は切なかった。凱は哀しかった。初めての恋が彼だっただけなのに・・・。  でも今は・・・今はこうしてこのときめきの中で、お互いを求めあうことが出来ている。愛し合うことが続いている。  それだけが、愛おしかった。愛おしくて堪らなかった。  もう少し先に、優輝の身体の中に本当に俺が入って行った時、ふたりの愛はきっともっともっと深いものになることだろう。大いなるものになって行くことだろう、と凱は思った。  激しく舌を絡ませ合いながら、いつでも凱を受け入れてあげもいいと優輝は思っていた。  そう思うと幸せいっぱいな気持ちに包み込まれた。溢れ出す愛おしさが泉のように躰の底から迸り出た。 「あぁこれが・・・」 とその思いを声に出さずに、噛みしめた。
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