(2)おるすばん

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 もう一度、壁に耳を当てると、  『ワン、ワン、ワン、ワン!』  さっきより、さらに大きく聞こえました。 「こえが おおきくなってる! こっちに きてるんだ!」  そうなると、マリアのわくわくも、さらにさらに膨らみます。  この壁の向こうに、ふわふわの、本物の犬がいる。  そう思うだけで、じっとしていられず、足をじたばたしてしまうほど、マリアの胸は高鳴っていました。  一歩下がって、時計を見上げます。  時刻は午後2時。ママが戻るまで、あと1時間ほどです。  マリアは時計からドアへ目を向けると、また壁を見つめました。 「ちょっとだけ… すこしだけみて すぐにもどってくれば…」  パパとママとの約束は、もちろん覚えています。  しかし、初めてこんなに近くで聞く犬の声に、マリアの心は大きく揺らぎました。  少しだけ、ほんの一瞬だけ。そう自分に言い聞かせ、マリアは足を踏み出します。
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