0人が本棚に入れています
本棚に追加
もう一度、壁に耳を当てると、
『ワン、ワン、ワン、ワン!』
さっきより、さらに大きく聞こえました。
「こえが おおきくなってる! こっちに きてるんだ!」
そうなると、マリアのわくわくも、さらにさらに膨らみます。
この壁の向こうに、ふわふわの、本物の犬がいる。
そう思うだけで、じっとしていられず、足をじたばたしてしまうほど、マリアの胸は高鳴っていました。
一歩下がって、時計を見上げます。
時刻は午後2時。ママが戻るまで、あと1時間ほどです。
マリアは時計からドアへ目を向けると、また壁を見つめました。
「ちょっとだけ… すこしだけみて すぐにもどってくれば…」
パパとママとの約束は、もちろん覚えています。
しかし、初めてこんなに近くで聞く犬の声に、マリアの心は大きく揺らぎました。
少しだけ、ほんの一瞬だけ。そう自分に言い聞かせ、マリアは足を踏み出します。
最初のコメントを投稿しよう!