くるみの木のパン屋さん〈3話〉

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 この森にしかない木、「モモザクラ」の花のつぼみが少しずつ開き始めて、春のおとずれを(かん)じ始める三月です。  くるみおばさんのパン屋のそばにあるモモザクラも、()き始めています。  くるみおばさんは森のパン屋で動物(どうぶつ)たちにパンを()り、いつでも元気と明るさをふりまいています。  ところが、そんなくるみおばさんが、最近(さいきん)元気がありません。  ひまさえあればボーッとしていて、口数(くちかず)も少なく、出るのはため(いき)ばかり。  パン屋に来たお客さんはそんな彼女(かのじょ)様子(ようす)を見て、首をかしげたり、心配(しんぱい)して聞いてきたりします。  すると、くるみおばさんは 「まあ、やだ。そんなことないわよ。私はこのとおり元気よ」  と笑ってみせます。  でも、お客さんがいなくなると、大きなため(いき)をつき、(まど)の外をぼんやりながめています。  くるみおばさんはいったい、どうしてしまったのでしょう。
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