131人が本棚に入れています
本棚に追加
〜国立名桜女子高等学校〜
夕暮れが迫った校庭は、強風に桜の花びらが散り舞い、春の嵐さながらの状況にあった。
紗夜達が着いた時、グランドにヘリが到着し、ラブの片腕であるT2が降り立った。
先に着いた神田署のメンバーが、裏庭へと向かっている。
「紗夜さん、久しぶりだな。まさか桜の木に呼び出されるとは驚いたぜ」
「T2…さん、来てくれてありがとうございます」
「T2でいい。何か…あっちがおかしい」
確かに、裏庭の方が騒がしい。
カンナの絹袋から、六芒星のペンダントを3人に配り、自分も首にかけた。
裏庭へ走る。
そして…見た。
「何だこの桜は⁉️」
豊川が、思わず声を上げる。
咲かない桜の木に、満開の花が咲き誇っていた。
「な…なんて色を…」
赤…とひと言で呼ぶには余りに生々しい深紅。
教頭が近付いて、それを見上げる。
ふと…ひとひらが、その額に舞い降りた。
「ん?」
手で取ろうとした時。
「あっ…グッ、ウワァァ助けてくれ⁉️」
振り向いた教頭を見て驚く面々。
額の花びらは血となり、みるみるうちに広がっていく。
苦痛に歪む顔に、血が滲む。
「グアああ、痛い!助けてくれ、助けて…」
神田署の刑事が、一歩踏み出す。
「みんな待って❗️これを首に掛けて。足りない人は、直ぐに見えない場所まで逃げて❗️」
T2が倒れる教頭を受け止め、かかえて運ぶ。
六芒星が光、出血が止まった。
「昼には蕾一つ無かったはずだが…」
豊川が呟いた時。
校舎に囲まれ、風を遮られていた木が…
大きく揺らぎ騒ついた。
大量の血の花びらが舞い落ちる。
「グァァアアーッ❗️」
逃げ遅れた2人が、花びらに囲まれた。
紗夜が走り、疼く右手で花びらを散らす。
「今のうちに逃げて!」
六芒星が光り、もう花びらを寄せ付けない。
「早く掘らねぇと、カンナも長くはもたねぇ!」
TERRAに戻ったカンナは、蝋燭を灯した六芒星の中心に胡座をかき、懸命に戦っていた。
彼女の目には、禍々しい悪霊が見えている。
全員で木の周りを掘る。
湿った土は柔らかい…と思った時。
「ガッ!」
一人が大きな桜の根を傷つけた。
「ウワァァ!」
鋭い枝が、脳天から彼を突き刺した…
かに見えた。
「あれは❗️」
ぼんやりと人の形が浮かび、枝を掴んでいる。
(早く…美里愛を!)
(あなたは、如月遥香さん?)
ソレが紗夜を見た。
(早く!阿良宮さんを解放して❗️)
「T2❗️」
「クソッ、みんな離れろ!カンナ〜頼むぜ」
幹を掴み、集中するT2。
身体中に埋め込まれたパワーチップが関節を繋ぎ、筋肉組織が変貌する。
「ミシっ…ミシっ…」
地中の根が抵抗し、幹が軋む。
そのT2を、無数の枝が襲う。
「グッ❗️」
T2を背に、如月の思念と、紗夜の右手のモノが、枝を跳ね返す。
幾つかは紗夜の体に触れ、血が飛び散る。
「紗夜さん⁉️」
「来ちゃダメ!離れて❗️」
「こんの…ヤロウォォオー🔥うりゃアー❗️」
「キェェァァァ−−❕」
不気味な叫び声と共に、桜の木が持ち上がった。
最初のコメントを投稿しよう!