【終章】2つの魂

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〜国立名桜女子高等学校〜 夕暮れが迫った校庭は、強風に桜の花びらが散り舞い、春の嵐さながらの状況にあった。 紗夜達が着いた時、グランドにヘリが到着し、ラブの片腕であるT2が降り立った。 先に着いた神田署のメンバーが、裏庭へと向かっている。 「紗夜さん、久しぶりだな。まさか桜の木に呼び出されるとは驚いたぜ」 「T2…さん、来てくれてありがとうございます」 「T2でいい。何か…あっちがおかしい」 確かに、裏庭の方が騒がしい。 カンナの絹袋から、六芒星のペンダントを3人に配り、自分も首にかけた。 裏庭へ走る。 そして…見た。 「何だこの桜は⁉️」 豊川が、思わず声を上げる。 咲かない桜の木に、満開の花が咲き誇っていた。 「な…なんて色を…」 赤…とひと言で呼ぶには余りに生々しい深紅。 教頭が近付いて、それを見上げる。 ふと…ひとひらが、その額に舞い降りた。 「ん?」 手で取ろうとした時。 「あっ…グッ、ウワァァ助けてくれ⁉️」 振り向いた教頭を見て驚く面々。 額の花びらは血となり、みるみるうちに広がっていく。 苦痛に歪む顔に、血が滲む。 「グアああ、痛い!助けてくれ、助けて…」 神田署の刑事が、一歩踏み出す。 「みんな待って❗️これを首に掛けて。足りない人は、直ぐに見えない場所まで逃げて❗️」 T2が倒れる教頭を受け止め、かかえて運ぶ。 六芒星が光、出血が止まった。 「昼には(つぼみ)一つ無かったはずだが…」 豊川が呟いた時。 校舎に囲まれ、風を遮られていた木が… 大きく揺らぎ騒ついた。 大量の血の花びらが舞い落ちる。 「グァァアアーッ❗️」 逃げ遅れた2人が、花びらに囲まれた。 紗夜が走り、疼く右手で花びらを散らす。 「今のうちに逃げて!」 六芒星が光り、もう花びらを寄せ付けない。 「早く掘らねぇと、カンナも長くはもたねぇ!」 TERRAに戻ったカンナは、蝋燭を灯した六芒星の中心に胡座(あぐら)をかき、懸命に戦っていた。 彼女の目には、禍々しい悪霊が見えている。 全員で木の周りを掘る。 湿った土は柔らかい…と思った時。 「ガッ!」 一人が大きな桜の根を傷つけた。 「ウワァァ!」 鋭い枝が、脳天から彼を突き刺した… かに見えた。 「あれは❗️」 ぼんやりと人の形が浮かび、枝を掴んでいる。 (早く…美里愛を!) (あなたは、如月遥香さん?) ソレが紗夜を見た。 (早く!阿良宮さんを解放して❗️) 「T2❗️」 「クソッ、みんな離れろ!カンナ〜頼むぜ」 幹を掴み、集中するT2。 身体(からだ)中に埋め込まれたパワーチップが関節を繋ぎ、筋肉組織が変貌する。 「ミシっ…ミシっ…」 地中の根が抵抗し、幹が軋む。 そのT2を、無数の枝が襲う。 「グッ❗️」 T2を背に、如月の思念と、紗夜の右手のが、枝を跳ね返す。 幾つかは紗夜の体に触れ、血が飛び散る。 「紗夜さん⁉️」 「来ちゃダメ!離れて❗️」 「こんの…ヤロウォォオー🔥うりゃアー❗️」 「キェェァァァ−−❕」 不気味な叫び声と共に、桜の木が持ち上がった。
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