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「最後まで悪いな」
「いえ、帰ってもする事ないので」
「結局、最後まで皆勤だったな。他の奴らはトットと春休み入って、卒業式だけ来るのがほとんどなのに…」
「家に居てもする事ないので」
出来上がった冊子を几帳面に揃え席を立つ。
「では、終わったので帰ります。3年間お世話になりました」
「こっちがお世話になりましただよ。迫平が居て助かったよ。雑用ばかり押し付けて悪かったな」
風紀委員の担任が礼を言うが、特に押し付けられた覚えはない。
自分が手伝う時は担任も居たし、本当に早く帰ってもやる事がないので丁度良いのだ。
小学校、中学校と学校に未練は無かった。
卒業と聞いても特別感は無く、学校が変わるくらいの認識だった。
別れを惜しむ友達が特に居なかったからだ。
だけど、今回は何となく学校から離れたくなかった。
中里と別れた後、フラフラと校舎内を歩いていた。
そして風紀委員の担任と会い、雑用を一緒にやってこの時間になってしまった。
それでもまだ何か見落としている様な、帰り難い気持ちがあった。
「いや、何も無いだろ。明日もまた来るんだしもう帰ろう」
振り切る様に言うと、カバンを持ち帰ることにした。
玄関まで行くと自分の靴入れの前に人が居る事に気付いた。
「あ、迫平先輩!まだシューズがあったから待ってました」
ヘラっと憎たらしい笑顔に眉間に皺が寄るところだが、その変貌ぶりに固まった。
「……誰だ、お前……」
「え…、多少変わっただけじゃ欺けないんじゃなかったんですか?俺ってすぐ気付いてくれるんじゃなかったんですか?酷い……!」
「いや、中里だろ。分かってるんだが……お前、誰だ?」
地味男になるんじゃなかったのか?!なんだ、この爽やかなイケメンは……?!?!
「反応悪過ぎ〜!そんなに俺変わりました?自分じゃ良い感じになったと思うんですが……」
「え、ちょっと、あれ誰?あんな背の高い人居たっけ?」
後ろで部活終わりの女生徒が噂していた。
中里は身長173cmの俺より高いから180cm近くあるのだろう。金髪の時は目立って仕方なかったが、髪を戻しても目立つのは変わらないかもしれない。
「……ピアスは外してないんだな」
「あ〜、今日で見納めすね。帰ったら全部捨てちまおうと思ってます」
2年経っても使い慣れない変な敬語を使われる。
「これで俺って分かりますよね?」
ズイッと顔を近付けて問われる。
「お、おぉ……」
「ならいいです。また明日!最後!見送りしますんで!式終わったらここ居て下さいね!!」
力強く言うと、中里は満足した様な嬉しそうな笑顔を浮かべて去って行った。
あれならもう風紀委員が指導する必要は無いだろう。
『だって、俺、先輩に注意してもらいたくてやってたから』
昨日聞いた言葉が蘇る……。
「……本気だったのか……」
顔に熱が集まるのを感じた……。
一回先輩目線から書いて続かず削除。
今回の2Pになり、2時間掛っちゃいました💦
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