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4 侵入犯、その後
私は当直明けの帰り道、駅までの通勤道を一人とぼとぼと歩いていると、商店街の手前にある駄菓子屋が目に入った。本来の仕事ではないのだけど、「捜査」の進捗状況を説明したくなって、お店に寄って行くことにした。
「おや、東署の鑑識さんね」
二度も訪ねたからだろうか、店のおばあちゃんは私を覚えていたようだ。
「しっかり調べたわけではないんですけど……」
私は昨日の当直の出来事を話すと、おばあちゃんは口に手を当てて笑い出した。
「まぁ、そうだったの……。その子は捨てられちゃったのかもしれないわね」
おばあちゃんは以前飼ってたというネコについて話し出した。
「鑑識さんが来てからというもの、以前にネコ飼ってた時が懐かしくてねぇ……」
おばあちゃんが飼ってたネコも同じような経緯でこの家に泥棒に入って来て、そのまま飼われたらしい。その原因は、捨てられて行き場を無くしお腹が空いてやって来たという。
「そうだったんですか……」
それを聞いて私は本署のケージに入れられた猫の様子が頭に浮かんだ。彼が不貞腐れている理由が何となく分かったような気がした。
「言われたら心当たりあるような……」
「もしそうなら、そのネコちゃん。飼わせてもらえないかしら。できたらでいいのだけど」
拾得物の動物の取扱については専門分野ではないので即答はできないけど、いくつかの条件をクリアしたら引き取りはできるはずだ。
「本署の方で聞いてみます」
もし本当に捨て猫だったら県に引き取られ、また分からないところでの生活を余儀なくされる。ふてた猫がさらにふてるだろうなぁと、その表情が容易に想像できると私の選択に迷いはなかった。
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