1 侵入犯、現わる

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 当直でペアを組む外川 朋幸(とがわ ともゆき)主任は事件係の刑事さんだが、私が鑑識係に配置される前は私の席にいた元鑑識係員だ。元々は事件係の希望だったところに今回の異動で事件係に空きができ、私自身も主任が空けてくれた鑑識係に入ることができた。念願叶ったという点では私と同じだ。 「早川」 「これから行く現場について疑問点はないか?」 「疑問点ですか?」  不意に出た主任の質問に私は答えを考えるけど、質問の狙いがよく分からなかった。 「本当の泥棒なら、もっと高価なものを狙いたがるんだろうけど、何で駄菓子屋かってことは気にならないか?」  確かに駄菓子屋は読んで字の通り、高価なものは置いてなさそうだ。さらに言うと、駅から東署までの通勤道にあるそのお店は、署員で知らない人は多分いないだろうし、勤務外でも通勤で警らしてるようなものだから、そこに泥棒が入ったということは俄かに信じ難いところもあった。 「まぁ、行ってみたら分かるだろうよ。現場は実際に見ないと判断できないからね」  私から見たら多聞班長の兄弟子に当たる主任は言外に、「どんな現場もタカを括ったらいけないよ」と教ているのは普段の勤務で班長の指導で分かった。
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