1 侵入犯、現わる

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 お店は昭和の頃から建ってるに違いない味のあるたたずまいの駄菓子屋さん。東警察署の管内は沿線沿いに下町が多いので、レトロな建物はまだたくさん残っている。放課後の時間帯は子供達がわいわい買い物に来てるが、土曜は午後からお店を開けるそうだ。  外川主任が引き戸を開けると、ガラガラと古めかしい音を立て、その音を聞いて奥から店主のおばあちゃんが出てきた。 「東署の刑事課です」 「ああ、忙しいのにごめんなさいね」  店主のおばあちゃんは私たちに丁寧に挨拶をしてくれて、中に入るよう案内した。 「現場はこのままですか?」 「そうなんです。何も触ってないのに、ここのお菓子の箱だけが倒されて、中身が一部無くなってるんですよ……」  話を簡単にまとめると、駄菓子屋の店舗奥の棚にあった箱が下に落ちて、お菓子がなくなっているという。お店の中は雑然と駄菓子が並んでいるけど、整頓はされているから説明する通り、転がった箱に違和感を感じる。やっぱり泥棒に入られたのだろうか。 「今まで、こんなことなかったですか?」 「そうねえ。もっとむかしは子どもたちもヤンチャだったけど、今の子たちはお利口さんだからねぇ……」  外川主任は肩を揺らして笑っていた。そのイタズラな横顔を見ると主任にも思い当たる節があるのだろう。  以前は子どもの数も多く店も賑わっていて、どさくさ紛れに失敬するヤンチャ坊主もいたそうだけど、おばあちゃん曰く最近では子どもたちもいい意味でいたずらっ子が減ったと言い、ひと世代前ほどお客は来ないようで、少子化の煽りをもろに受けているのは様子でわかる。 「確かに、店の中に侵入したようだし、自然にこうなった訳でも、ないよなぁ……」  主任の言葉を聞いて二人で顔を見合った。互いの経験則から判断したところ、これまでに見てきた泥棒の現場という感じがまるでしない。でも、現場というのは二つないから個々に観察するけど、それでもこの現場に侵入した犯人の意図が読めなかった。  結局指紋や足跡などを探してはみるものの、事件を裏付けるような資料の採取には至らなかった。でも物自体は無くなっているから盗難事件として処理することとなったけど、私たちはあまりスッキリしなかった。でも、主任は帰り際に子どもの目になって客として駄菓子をいくつか買って現場を後にした。
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