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「班長」
「なんだ?」
「最初から犯人はネコの仕業って分かってたんですか?」
帰りの道中で私から質問をした。
さっきの現場に着いた時、班長は着くなり何かを見切った様子でずっと下を向いていた様子が思い浮かんだからだ。
「あぁ、下町の育ちだからよ、現場を聞いてなんとなくそうだと思った。」
班長はさっき駄菓子屋で買った麩菓子を私に勧めながら答えてくれた。
班長曰く、子どもの頃駄菓子屋にはよく通い、そこでも猫を飼っていたそうだ。昼は招き猫、夜はネズミ退治の警備員のような役割をしていたのを思い出してピンと来たとか。普段から思うけど、我が師匠は経験則を仕事に活かすのが上手だ。
「これで問題が解決したとは考えないけど、ウチらの出番はここで終わりかな。あとは交番に任せておこう」
私は腑には落ちなかった。でも、班長の言う通りだ。言葉の中に私の考えていることまで見えているのが分かった。
いずれにせよ、今回の件については人のしでかす事件には当たらないことから、刑事課の捜査は打ち切ることとし、以後は受け持ちの交番に引き継ぐこととなった。できれば解決まで携わりかったけど……。
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