1 侵入犯、現わる

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1 侵入犯、現わる

 警察署で勤務する警察官は交番の勤務員だけでなく、刑事課はじめ本署で勤務する勤務員にも当直というのがある。交番のように毎回勤務ごとに当直に着くのではなく、私こと早川 菜那子(はやかわ ななこ)巡査の所属する刑事課や交通課、生活安全課など各課から数人受付に集まって事件事故に対応する。  そんな土曜日のある日、一部の休日出勤を除いた閑散とした東署の受付で私は電話当番をしていた。  実は私、当直が好きではない。というのも平日ならデスクに私の師匠である多聞 大文(たもん ひろふみ)班長がいるのだが、当直の時間になると鑑識に関係する業務は全て私に任される。赴任数十日の私にそれが勤まるはずがなく、事案の発生があれば班長に電話を掛ける始末だ。 「まぁ、当直なったら分からんこといっぱいだろうて。いつでも電話してよ」 と言って、分からなかったらやらかす前に連絡くれよと笑って言ってくれるけど、やっぱり気を使う。  大事な税金いただいて働かせてもらってるのだから、当直中に何もないということもあんまりない。   「県警本部から東署」   「東署です、どうぞ」   「泥棒が入ったのでは……    場所は東警察署管内の……」 と思ってたら案の定だ。無線が私の出番を宣告した。  同じ当直の外川巡査部長も横で聞いていて腰を上げた。 「泥棒が入ったみたいだな、(現場に)行こうか」 「はい」  私たちは現場で使うセット一式を車に乗せて現場に向かうことにしたーー。  
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