初めての落語 初めての長短

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「お父つぁんには聞いていただけましたかね」 「笑顔で涙流してます」 「ふぁ~、おいらもね〜。涙が、出て来ました」  長太郎さんが欠伸をしながら背筋を伸ばしました。 「寝てたじゃないかい。でも、まあ、満足してもらえたのなら結構結構」 「先生、本当にありがとうございました。じゃ俺らは帰るぞ」 「お父つぁんも帰ってもらってくださいね」 「それが、あの~」  また、長太郎がもじもじとしておりました。 「びっくりしね~かな~」 「なんですか、今更何もびっくりしないから早く言いなさい」 「あの~、おとっちゃんが~、その~、友達も連れてきちゃったようで。芝浜から勝五郎、粗忽長屋から熊五郎、酒の粕からは与太郎が、あら~、なんか次から次へと」 「そうですか、でももう疲れました。申し訳ないけど帰ってもらって下さい」 「それで~、その中の一人が、あの~、お土産が欲しいそうで」 「もうありません」 「でも~手土産が欲しいそうで」 「ありません」 「でも〜、あの〜、もうそこでお土産もらうの構えてまして」 「ツラの皮の厚い人だねー」 「いえいえ厚くはないですよ。だって、ツラの皮はないんです」  短八さんが顔の前で手を激しく振り答えました。 「ない?」 「ないんです」 「?」 「あの~、死神が。古典から来た死神が。ど~しても冥土の土産が欲しいんだそうで。鎌を構え、す~ぐ横に立ってます」 「は、早く言ってよー」 私は飛び上がって逃げるように控え室を後にしました。 終わり
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