第1話.時代がめぐっても、気持ちはきっと埋もれない

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「ケガは眞宮さん? 痛いところは?」  内田は医者のごとく親身になってあれこれ聞いてくる。  パンプスを履き直し荷物や服装の汚れを払ったひなたは、おそるおそる二本の脚で立った。うん、ひねった足首は気になるが我慢できないほどじゃない。内田に向き合うなり、強めの口調で言った。 「内田さん、自分のことより助けたい人が他にいます。少しだけでいい。私に協力してください」  彼はやはり丸い目を更に丸くしていた。しかし、 「お話、伺いましょう」  事態が急を要していると察してか、すぐに車の助手席に乗るよう勧めてくれた。
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