ラジオネーム、さえちゃん

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ラジオネーム、さえちゃん

 夕食後急いで部屋に戻るのは、早く勉強をしたいからというわけではない。時計を確認すればもうすぐ8時になろうとしていたからだ。  机の上に置かれた古いラジカセのスイッチを入れれば、8時の時報が流れた後、耳慣れたBGMが聞こえてきた。 「さあ今日も始まります。平日8時のエイトリラックス! パーソナリティの中川葉月と」 「アシスタントの水村です!」 「週の真ん中水曜日、今日も飛ばしていきますよー」  何とか間に合った、と胸を撫でおろしながら勉強の支度を始める。  平日の夜8時から11時までの3時間、スターラジオが放送している『エイトリラックス』は楽しみの一つだった。最初は勉強中に何となく流していたが、今は中川さんとアシスタント水村さんのやり取りや流れてくる選曲のセンスのよさ、そしてある楽しみのために毎日欠かさず聴いている。  今日は英語の勉強をしようとノートを開いたところでCMが明け、中川さんの声が聞こえてきた。 「じゃあ今日もお便りたくさんいただいてるので読ませていただきます。えーっと、あ、常連さんですね。ラジオネームさえちゃん」 「おっ」
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