煙に巻く肺の空

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 煙草の煙って、よく見ると青色なんです。  葉や巻紙が燃えた後の(こま)かい粒子に、短波長の光を散乱するからだそうです。  空が青く見えるのと同じ原理。  煙が体内に入ると、水蒸気が混ざって白くなるんだそうです。  これは雲と同じ原理。    肺の中で、雲を作っている。  自分の中に空があるんです。  なんだかそれって、とても素敵じゃないですか?  知っていましたか?先輩。 「それが、君が煙草を始めた理由?」  先輩、驚いていますか?  ずっと先輩に「煙草をやめろ」って。  そう言ってきましたから。   「百害あって一利なし。  肺は真っ黒、肺の病気に、動脈硬化。  あとは、何だっけ?  ああ、そうだ。  『眩暈がするほどの依存性』」  そうです。覚えてますか?  高校の恩師が、禁煙を始めたら、ストレスでぶっ倒れたって話。  だから、煙草始めたんです。  早く死にたくて。
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