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元いた世界の友達の顔が浮かび、泣きそうになって慌てて下を向いた。
「……なんだ、一人か? だったら俺と遊ぼうぜ。俺のダチを紹介する。あんたくらいの年の女もいるから、きっと楽しい。ちょうどこれから集まるんだ」
「でも、いきなり行ったら迷惑じゃ……」
「そんなこと言う奴なんかいないって。誰かが知らない奴を連れてくるなんて、しょっちゅうだしな」
どうする、と聞かれて、千勢が迷ったのはほんの一瞬だった。
見知らぬ人の誘いに乗るなんて危険だと、頭の中で注意をしてくる声があったが、このまま部屋で一人になりたくない気持ちが勝った。
自棄になっていたのかもしれない。
「ありがとう、ご一緒させてください」
「決まりだな。俺はアルヴァだ。あんたは?」
「千勢です」
「変な敬語はナシだ。ダチにそんなしゃべり方しないだろ?」
笑って言ったアルヴァに、千勢も少しだけ笑みを浮かべた。
アルヴァに案内されたのは、川沿いに並ぶ倉庫の一つだった。
先ほどまでいた、人で賑わう通りからは少し離れている。
千勢がここに来たのは初めてだ。
「ここだ。そんなに緊張するな。みんな気やすい連中だ」
硬い表情になっていた千勢に笑うと、アルヴァは倉庫の重い鉄扉を引き開けた。
ワッ、と大音量の音楽があふれた。
アルヴァがその音に負けないくらいの声量で呼びかける。
「新しいダチを連れてきたぞ!」
とたん、いくつもの目が千勢に向けられた。
「女の子だ! おいおい、ナンパしたのか?」
「何て言って釣ってきたんだよ!」
「悪い奴に捕まっちまったなぁ!」
明るく笑う彼らは、みんな千勢と年が近い。それと彼らの服装から、それなりに裕福な家の子達と思われた。
「ねぇ、こっち来なよ! ここに座って!」
そんな中、女の子の声が千勢を呼んだ。
ここに集まっているのは男子が多いが、アルヴァが言った通り女子もいた。
何人も座れるような半円形の大きなソファで思い思いの姿勢でくつろいでいる。
千勢がアルヴァを見ると、「行ってこいよ」と背を押された。
忙しく手招きしている女の子達に歩み寄ると、グイッと手を引かれて、千勢は半ばソファにダイブさせられた。
「わぷっ」
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