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ようやく、ようやく待ちに待ったこの時が来た。
僕は今まで世界を見たことがなかった。
「楽しみだなぁ」
ついつい笑みがこぼれる。
「ふふ、そうね」
隣で車を運転してくれている母の声も嬉しそうだ。
僕は目の病気により小さいころから盲目で外の世界も親の顔も見たことがない。だが、この数年の医学の進歩により僕の目を見えるようにすることができるまでになった。そして、僕の手術は成功した。
そんな僕と母がなぜ車で移動しているかというと病院の中ではリハビリで目の調子を確かめていたが僕の願いを病院の人たちが叶えてくれたのだ。
「母さんあとどれぐらいで着くの?」
「もう何回聞くの?少し前にも聞いたでしょ。もう少しよ」
僕はワクワクが止まらずに先ほどから母に何度も同じことを聞いているのである。だが、それだけ楽しみなのである。
僕の願いとは初めて外の景色を見るのなら海を見てみたいと言ったのだ。病院の人たちはそのことを叶えてくれて外の景色を見せないようにしてくれたのだ。
「さあ、着いたわよ」
車を止め母さんが言ってくる。
「本当?」
「ええ、さぁ車から降りて」
僕は母さんに言われた通り車から降りた。
「さぁ!目隠しをとるわよ。準備はいい」
母さんが楽しそうに聞いてくる。
「うん!いいよ!早く」
僕は緊張と興奮が入り混じった声で母を急かす。
「それじゃあとるわよ!」
「うん!」
返事をすると母さんが目隠しを取ってくれる。そこに広がっていたのは
「これが・・・海」
僕はその美しさに見惚れたそれほどまでに初めて見た海の景色は綺麗だった。
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