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長谷川がそう尋ねると、店員が詳しく教えてくれた。長谷川が言った服や靴、鞄がそれぞれ箱や手提げバッグに入れられ、店の奥へ案内される。くるみはどこへ行くのかと戸惑うが、長谷川は慌てる事なくくるみの手を繋ぎ、案内される部屋に入った。
ソファーとローテーブルがあり、くるみを先に座らせ長谷川が隣に座る。すると店員に飲み物の好みを訊かれ、長谷川が即座に答える。
「あっ、いいよ。急いでいるんだ、会計を頼む」
「あ、はい」
店員は返事をすると、ほどなく購入した明細と請求書を持って来て、長谷川の前に置いた。長谷川は上着の内ポケットから財布を取り出し「カードで」と言って、黒いカードをお洒落なキャッシュトレーに置く。
(えぇ! ! ブ、ブラック…カード……なんで、持てるの…?)
クレジットカードの最高峰『ブラックカード』
一般、ゴールド、プラチナ、そしてブラック。必ずしもカードが黒色という事はないが、ほぼ黒色のカードが発行されている。所持出来る条件としてすぐに浮かぶのは年収だが、ブラックの場合、様々なステータスを踏まえ年収金額は明らかになっていない。プラチナで年収400万円から最高1,000万円と言われているという事は、ブラックはそれ以上という事は明らかである。
店員が目の前で機械にカードを通し会計を済ませ、カードと明細を長谷川に渡す。カードと明細を財布にしまい、上着の内ポケットに財布をしまって、長谷川が立ち上がる。くるみは目の前で起きている事に圧倒され、呆然と見ているだけだった。長谷川が大量の手提げバッグを持ち、くるみに手を差し伸べる。
「くるみ、行こう」
くるみは長谷川の手を握り、指を絡ませて手を繋ぎ2人は店を出た。車に戻りながら長谷川は話す。
「じゃ、次は下着だな。てか、今、下着ってどうなってるんだ?」
「い、いや、それより……なんで?」
「ん…? なんで? って何が?」
「色々となんで? だけど、今はなんでブラックカードなんか…」
「あぁ、それは…俺、金崎旅館の跡取だぜ? 当然だろ?」
長谷川はそう言って笑った。
(いや……そうだけど……答えになってないよ……だって旅行会社の社員でしょ?)
くるみはそう思いながら手を引かれて車に乗った。すると長谷川がくるみに言う。
「くるみだって、そんなの着てるだろ」
「えっ…」
「店の店員が話してた。「総絞りの着物じゃない? すごい高そう」ってさ。総絞りは高価だって知ってるけど、一体いくらなんだ? それ…」
「あっ、そういわれてみれば……そっか。うーん、確か、着物が220万で帯が150万だったっけ…」
「着物と帯で370万かよ! あと諸々合わせて、総額380万くらいか…」
「うーん、そんなとこかな……へへ…」
改めて金額を考えると、気軽に街に出て買い物などしている場合じゃないと、くるみは顔を引きつらせて笑うしかなかった。
「十分、くるみも「何者?」って思われてるぜ。まぁ、着物の事が分かる人しかその凄さは分からないだろうけど…」
「うん…」
車を走らせ教えてもらった下着店の駐車場に到着して、長谷川の手を借りて車を降りる。
「くるみ、もう少しだ。下着はくるみが選ばないと、俺には分からないから…」
「うん…」
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