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それ、はどこからともなく飛来し、不快な音波を放ちながら
僕の傍らで眠る彼女の、毛布からはみ出た二の腕に止まりました。
それは虫、というものの一種なのでしょう。
教団にいた頃は、標本にされた蝶ぐらいしか見た事が無かったのです。
サッシ窓から差し込む月とネオンの光で、小指の爪くらいの大きさのそれを観察していると、あろうことかくちばし状の突起を、彼女の肌に突き刺したのです。
ふぁあっと、頭に血の気が昇りました。
彼女が汚されている。
理不尽な力によって蹂躙されている。
そんな思いが脳髄を走りました。
目の前のそれを絶対的な力で滅したい。
僕は手を振り上げました。
いや
このまま手を叩きつければ、彼女ごとに…
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