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それは違います。
僕が願ったのです。
あなたが教えて下さった外の世界を是非、見てみたかったのです。
そう思いながらも、僕の口から出たのは
「…別にいいですよ。教団の教え、どうなんだろうって思ってましたし」
何とも愛想の無い返答でした。
彼女は再び微笑いながら荷物をゴソゴソすると、ポケットティッシュ(というものらしいですね)を差し出しました。
「血、付いてる。拭いて」
「…」
僕が掌を拭うのを彼女は黙って見つめていました。
昼間しているキツめの化粧を落とした彼女の瞳は、細くて。
窓から覗く下限の月の様でした。
教団に祀られていた、月の女神像にも似ているような、どこか遥か昔に見たことが有る様な…
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