10

1/1
前へ
/11ページ
次へ

10

「さっきは帰れって言ったくせに?」  雨脚が酷くなる外を見て「泊まれば?」と言えば、ミオリは笑った。 「確かに言ったけど……帰る場所がないってさっき……」 「一応あたしも施設に入ったの。学校を卒業するまではいられるんだ」  俺は、「そっか」と小さく頷いた。 「……また会いに来ていい?」  顔を上げれば、揺れる瞳の奥に俺が――いや、俺を助けてくれた男がいた。  そして、少女もまた孤独に耐えていた。  俺は、ぎこちなく笑った。  この姿になって、はじめて笑いたくて笑った。 「ああ」  ミオリがふと首を傾げた。 「そういえば、名前はなんて呼べばいい?」 「シマでいいよ。島倉だし」 「分かった! 改めて、よろしくね、シマさん」  ミオリは嬉しそうに笑っていた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加