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「さっきは帰れって言ったくせに?」
雨脚が酷くなる外を見て「泊まれば?」と言えば、ミオリは笑った。
「確かに言ったけど……帰る場所がないってさっき……」
「一応あたしも施設に入ったの。学校を卒業するまではいられるんだ」
俺は、「そっか」と小さく頷いた。
「……また会いに来ていい?」
顔を上げれば、揺れる瞳の奥に俺が――いや、俺を助けてくれた男がいた。
そして、少女もまた孤独に耐えていた。
俺は、ぎこちなく笑った。
この姿になって、はじめて笑いたくて笑った。
「ああ」
ミオリがふと首を傾げた。
「そういえば、名前はなんて呼べばいい?」
「シマでいいよ。島倉だし」
「分かった! 改めて、よろしくね、シマさん」
ミオリは嬉しそうに笑っていた。
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