4人が本棚に入れています
本棚に追加
7
「あいつは、俺にご飯をくれる人間だったよ」
俺は、西日が差し込む部屋を見渡しながら言った。
「ご飯をくれながら、ここはペット禁止だから、とか、本当はこれもいけないことだけど、って言い訳してた」
ミオリは口を挟まず、椅子に戻った。
「帰ってくるのはいつも深夜でさ。寝ればいいのに、俺のご飯を持って待ってた」
この部屋の本当の主が立っていた窓際に目を留める。
今でも彼がそこに立っている気がした。
「雨の日は、こっそり部屋に入れてくれた」
「あなたがいたのは、あそこね」
「今でもあそこに寝てる。ベッドは汚したくないから」
二人して、今度は部屋に隅にあるタオルの敷かれた籠を見た。
そういえば、この部屋に入ってから俺のことを『シマ』とは呼んでいなかった。
ここでは、俺はそう呼ばれていなかったから、気を使ってくれているのかもしれない。
「その紙を見付けた日も、雨が降っていたな」
最初のコメントを投稿しよう!