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あの日も、俺が入れるだけの窓が開けられていて、ご飯は用意されていた。
だが、部屋の中にいつもと違う臭いがした。
死臭というやつか。
ここに彼はいなかったが、テーブルの上のメモを見て、この世にももう彼はいないのだと感じ取った。
滲むこともなく、細過ぎもせず、かと言って太くもなく。
淡々とそこには事実が書かれていた。
俺は、なぜかとても悔しくなった。
俺は時々見ていたのだ。
俺にご飯をくれるその後ろで、電話越しに何か怒鳴られている彼の姿をずっと見ていた。
電話口から漏れる微かな怒鳴り声は、いつだって全く要領を得ないもので、理不尽だった。
何も悪くないはずなのに、謝っていた彼の姿を。
深夜まで働いて、帰宅しても休日でも怒鳴られ、疲れ果てていた彼の心を。
彼に味方をしない人間と時間を、俺は見ていた。
そして、誰にも頼り方を知らなかった彼を見ていることしかできなかった。
悔しかった。
寂しくて、泣いた。
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