終 愛しの恵莉

2/3
前へ
/41ページ
次へ
 エリーは翌朝、わざわざ新横浜駅近くの交番に出頭した。  彼の供述と物的な証拠などから、殺人を依頼した団体が特定され、数名が逮捕された。  エリーとサンライズの中華街での追いかけっこは、実はずっと中華系の組織から監視されていたのだが、サンライズはおろかMIROCのほとんどのメンバーがそれを知ることはなかった。  とある組織のナンバー2である老婆は、ずいぶん後になってからだが親類の集まりの時に、親戚の陳にこう語っていた。  自分の妹の孫にあたる陳は、MIROC東日本支部という訳の分からない防犯機関で働いており、彼女の最もお気に入りの小僧だった。 「阿文(アーウェン)、もっと肉を食べないと太らないよ」  そう、皺だらけの手で自分の膝もとに招きながら、遠慮しがちな彼の手を小柄な割に強い力でぐいと引き寄せ、耳うちのように小声で話してくれる。 「アタシが助けに行った時には、乾物屋の頼んだ殺し屋は帰っていったよ。オマエの会社の子だったっけ、鼻血が出た子は。あの子は運が良かった」  陳は控えめに目を伏せ、 「ホントですね」  とだけ応えた。  エリーが逮捕されてから数ヶ月後。  知らない女性から、サンライズの元に手紙が届いた。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加