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エリーは次から次へと人を殺した。
路地裏で。部屋の中で。ビルの屋上で。地下で。海の上で。森で。雑踏で。
コップの水を飲むくらい自然に。針に糸を通すように慎重に。
せめてあまり苦しませないように、というのが、彼の主義といえば主義だった。
できるだけ能率よく、迅速にと心がけてはいた。
趣味でやっているのではない、仕事なのだから。
先月は三人、その前の月は八人を殺した。
八人のうち五人は、一つの仕事で始末をつけた人数だった。彼らは同じ車に乗り合わせていた、家族だったので。
ターゲットはそのうち二人。あとの三人は彼らの子どもだった。
上から十二歳、九歳、そして三歳の男の子たち。
元々のターゲットとなっていたのは働き盛りの父親と、聡明な美しい母親だけだ。
夫婦は会計事務所を開いていた。だいぶ繁盛していたらしい。ある団体の帳簿をまかされてから、都心にほど近い超高層マンションの一画に居を構えた。車も買い換えた。
端からも、幸せそうな一家にみえた……死を悟る間際までは、多分。
エリーは、元々の依頼主が誰なのか、知る由もなかったし、知りたいなどとも思わなかった。
ただ、言われていたのはひとつ。二人を確実に始末して欲しい、と。
子どものことは一言も聞いていなかった。
多分、子どものことなど、誰も最初から思い至っていなかったのだろう。
エリーは、少しだけ考えてから、心を決めた。
いったん決めてしまえば、迷うことなど何もなかった。
週末にはその一家は、母親の実家に帰るのが習慣だった。
道中、いつも休む場所が決まっていた。海を見おろせるそのパーキングエリアでたっぷり休憩を取った後、全員が車に乗り込み出発しようとしたとたん、車は爆発、炎上した。
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