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新しい仕事の依頼が届いた。
郵送されたファイルには、同じ男の写真が数十枚、あとはその男の簡単な経歴だけが書かれていた。
エリーは、スナップショットを一枚いちまいゆっくりと眺め、ファイルを隅から読む。
特に、横顔と後ろ姿を目に焼き付けてから、まぶたを閉じてその姿を頭の中に描きなおしてみた。
男はどこか、途方にくれた様子に映った。
電話がかかってきたとき、エリーはいつものように聞いた。
「どこに行けば会える?」
場所を聞いて、手元の地図に目をさまよわせる。
「分かった」
電話の向うの声が少し、人間味を帯びた。戸惑いを交えた声だった。
「それと今回は、依頼主が余分なことをしたいらしくて」
エリーは黙って次のことばを待つ。
「相手に、予告状を送りたいと。オフィスに。バイク便だと思うが。予定日の朝。決行日を予め決めてほしいんだそうだ」
「それは料金に入っていれば構わない、別に」
「その日に確実にできるのか?」
「決めれば、やるさ」
簡単な事務手続きの話をした後、エリーは急に切り出した。
「ちょっとさ」
相手はだいぶ、びっくりしたようだった。
「何か問題でも? 銃か薬品投与というのがまずいのか」
「いや。違うんだけど」
エリーは少し言葉に迷ってから、奥の部屋をちらりと見てから長い間の中で初めてこう聞いた。
「この男の人だけど、何した訳?」
電話の向こうが、絶句した。が、やっと気を取り直したように問い返す。
「何? 知り合いだったか」
「いや。全然」
「……ならば、悪いが、細かいことはこれ以上言えないんだ。あとはメールで送る分だけ。申し訳ないけど」
「いいけどね。別に」
「何で急に気になったんだ?」
「別に。ほんと、なんとなくだよ」
電話が切れてからも、エリーはじっと、広い部屋の暗がりに佇んでいた。
そして、さっき目を走らせた部屋に、足音も立てずに歩いていった。
順調に、片がつくはずだった。
あの男が目の前に現れるまでは。
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