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「そうだね」
サンライズは、ぎりぎりと奥歯をかみしめながら頭痛と戦った。
「でもいつか死んでしまうからこそ、生きることが大切なんだ」
幻影の恵莉を見下ろしながら、実際は彼女の脇に横たわった姿勢で、サンライズは心の中で今度はベッド下の恵莉の父親に語り掛ける。
―― エリー、聞いてくれ。
人が人を殺す、簡単にできることかもしれない。
憎んでも、憎んでいなくても、やり方さえわかれば、殺人はあっけないほど簡単だ。
正義のため、報酬のため、欲のため、復讐のため、人は色んな理由をつけて人を殺す。
しかし本当に、彼らは自分のしていることが判っているのだろうか?
他人を殺すことは、自分を殺すこと。そして自分を死なせることは、与えられた世界をひとつ、消しさることなんだと。
目的のない命はない。生きているということは必ず、意味がある。
そう思ってみてくれないか。
いつの間にか、恵莉はぐっすりと眠っていた。
先ほどまで全身を覆っていたどす黒いオーラは、霧がはれるようにすっかり消えていた。
手足のまひも相変わらずだが、わずかに、くつろいだような弛緩がみられた。
サンライズはやっとのことで起き上がってベッドを降り、エリーの戒めをといた。
そして、黙ったまま彼女の寝顔をみせる。
ふたりはしばらく、夜景のひそやかな灯りに浮かび上がるその静かな寝顔をながめていた。
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