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宇宙一の王子様
「朽木くん。いま、なんて言ったの?」
歯切れが悪い。
だけど断定的に朽木くんは言った。
―――2XXX年 7月 1日
F-77型のアンドロイドは暴走する。
「暴走って……アンドロイドは、伊織はどうなるの?」
現実感のない話に、頭が追いつかない。
「暴走したアンドロイドは、人間を襲う。
例え相手が、自分の仕えるマスターであっても……」
いつも私を守ってきた伊織が、私を襲うわけない。
そんなこと、出来っこない。
「そんなの……前もって修復すれば防げるんじゃないの?
修復プログラムとか、何かしら方法はあるんでしょ?」
「プログラムが複雑で、大量生産されたF-77型の全アンドロイドに施すには時間もコストもかかるし、技術者の数も足りないんだ。
だから研究所は、F-77型のアンドロイドをすべて強制的に回収しようとしてる……」
「回収って、いつ………」
「回収時期はまだ決まっていないけど、早急にって……二、三日後ってことも十分にあり得る」
そう言って噛み締められた朽木くんの唇から、これは現実なのだと痛感する。
「回収されたアンドロイドは、どうなるの……?」
「研究所が所有してる離島があるんだ。
そこで収集ことになってる」
「収集した、そのあとは?」
「……アンドロイドは、スクラップになる」
スクラップ。
つまりそれは―――死だ。
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