宇宙一の王子様

2/6
前へ
/18ページ
次へ
「そんなのおかしいでしょ? いくらアンドロイドだからって………ねぇ、おかしいでしょ?!」 テーブルを叩きつけるとティーカップは床に抛られ、砕け散った。 伊織が誕生日に買ってくれた、淡い桜色のティーカップ。 バラバラになってしまえば、もう元には戻らない。 肩で息をしているとノックが聞こえた。 「咲良(さくら)、なにか割れた音がしましたけど……あ、カップが。 大丈夫ですか? 怪我は?」 「怪我はないよ。ごめんね、伊織。 せっかくプレゼントしてくれたのに……」 「怪我がないのなら良かったです。 カップはまたプレゼントしますよ。 僕も新しいカップが欲しかったから、ちょうど良かった」 眼鏡越しに伊織が微笑み、艶のある黒髪が僅かに揺れた。 私は何度この笑顔に救われただろう。 「すぐに破片を片付けますね」 「私がやるからいいよ」 「いいえ、僕が片付けます」 「伊織、夕飯の支度をしてたんでしょ? 私だってもう、子どもじゃないから片付けくらい出来るよ」 「……わかりました。咲良にお願いします。 手を切らないように気をつけてくださいね」 「わかった」と頷くと、伊織はそっと頭を撫でた。 私への子ども扱いは昔からずっと変わらない。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加