認めたくない事実

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最高の気分だったのに、いつもどん底に落とされた状態でシャワーを浴びている自分に笑いが込み上げてくる。 シャワーから戻ってくると当然のごとくすみれの姿は無く、乱れたベッドだけがさっきの情事を生々しく語っていることに、無性に腹が立ってくる。 そのまま服を着替えてチェックアウトして家に帰る。 家に帰ってからの方が最悪で、イライラした気分のまま寝れる訳もなく冷蔵庫に置いてあるビールを何本か開けてから、そのまま無理やり眠りにつく。 朝も低空飛行のまま会社に向かう。 気持ちを入れ替えるためにも自分のデスクに行く前に、自販機でブラックコーヒーを買う。 「佐原さん、おはようございます。昨日凄かったらしいですね」 鼻にかかった嫌な奴の声が耳に入ってきて、更にイライラする。 「誰から聞いたの?」 「部長が昨日嬉しそうに飛び回ってましたよ」 アシスタントの今井まみが自販機にお金を入れながら声を掛けて来る。 たぶん今井は俺のことが好きなんだと思う。 だけど、今井みたいに媚びてくるようなタイプは好きではない。 このまま適当にやり過ごそう。
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