認めたくない事実

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「あー、目に浮かぶわ。今井さんも色々とありがとう。これからが忙しくなるから」 そう言って自分のデスクに行こうとするも、今井が更に話しかけてくる。 「私の作った資料お役に立ちましたか?」 資料を作ってくれたのはありがたが、それ以上にすみれのプレゼンが圧巻で資料には目も配られなかったとは言えない。 「わかりやすかったと思うよ。御礼にコーヒーでも買ってあげるべきだったね。気が利かなくてごめん」 「いやだ、そんなつもりで言ったわけじゃないんですぅ」 このやり取りすら面倒くさくなってきたと思っていると、昨日吸い尽くした香りと同じ香りが漂う。 目を向けるとすみれが出社してきた。 俺に気付いたようだが、一礼してそのまま行ってしまった。 その態度が気にくわない。 「今井さん、このあと昨日の案件についてのミーティングがあるからよろしく」 今井さんに声を掛けて、そのまま通り過ぎて行ったすみれを追いかける。 「ちょっとその態度なんだよ」 追いついたすみれの腕を掴むも、直ぐに振りほどかれる。 「ちょっと、ここ会社だよ。その態度って、いつも通りの態度でしょ」
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