甘い蜜

認めたくない事実

こうなったら部長は何が何でもチームを解体して、俺をこの企画書の担当に充てるつもりだろう。

抵抗しても無駄だと判断する。

「分かりました。企画書目を通します。メンバーについて、またあとで教えて下さい」

俺の回答を聞いて部長は満足そうに自分のデスクに戻っていく。

俺は急いでスマホを鞄から出して、すみれにメッセージを送る。

『チーム解体だって。俺がいなくて大丈夫？』

きっとすみれは俺がいなくても問題無いという回答をするだろう。

分かっていながらも女々しいメッセージを送ってしまう。

結局すみれがメッセージを確認する前にミーティングが始まってしまった。

「受注案件ということでチームを一旦解体します。営業はそのままでマーケチームを入れ替えます」

意気揚々と発言している部長の声に一瞬すみれの顔が歪み、直ぐに俺の方に顔を向ける。

直ぐに俺の方を向いてくれたのは素直に嬉しかった。

小さくスマホのジェスチャーをしてメッセージを確認するように、すみれに目配せする。

この二人だけのやりとりが俺の落ち込んでいた気持ちを、少しだけ上昇させる。