認めたくない事実

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「部長の若かりし頃なんて想像できないよね。今や、あんなにお腹が出ちゃってるし」 「そうだよな。部長じゃないなら栗林の他に誰がイケメンなんだ?」 すみれは一瞬黙って、目の前にあるランチプレートの野菜をいじっている。 「例えばあんたとかも、その部類に入ってるわよ」 一般論じゃなくてすみれはどう思っているのかが聞きたい。 「すみれもそう思う?」 すみれはさらに黙ってランチプレートの野菜をいじる。 一向に何も言おうとしないので、もう一度問いかけてみる。 「おい、何とか言えよ」 すみれはいじっていた野菜を箸で摘まみ口に運ぶ。 もぐもぐした後に水を飲んだかと思うと、じっとこちらを見てくる。 真っすぐなすみれの視線におれの心臓がどくんと音を立てる。 「同期だからか、そんなこと考えたことも無かった。ところで、あんたは新しいプロジェクト何やるの?」 適当にはぐらかされてしまったようで、結局すみれは俺をどう見ているか分からないまま話題が変わってしまった。
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