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俺はすみれを抱く前はとっかえひっかえ女を変えていた。
だいたい飽きるか束縛が嫌になって疎遠になっていくことが多かったから、社内では絶対そんな関係を持つつもりはなかった。
すみれだけは特別だった。
入社した時から俺はずっとすみれに目を奪われていた。
背が高くすらっとして黒くて長い髪を靡かせて、すみれは誰にも媚びることなく淡々と仕事をしていた。
最初は不愛想な奴だと思っていたけど、一緒に組んで仕事をすることが多くなってからすみれの見方が変わった。
誰にも媚びずに仕事をしていた背景には人知れず努力していたすみれの姿があった。
いつも与えられた仕事に真っすぐに向き合い、受注をとるまでの営業戦略をしっかり練って商談に挑んでいた。
ほとんど男性ばかりの営業部の中で、女性だから使えないと言われないように頑張っているすみれの姿にいつの間にか俺の心も奪われていた。
気付いたらすみれのことが好きになっていた。
食堂でお昼を一緒に食べたり、休憩の自販機前で一緒に缶コーヒーを飲んだりしていたが、その距離は中々縮まらなくて悶々とした日々を送っていた。
1年前この状況を変える出来事があった。
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