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そう言いながらすみれは自分の腕に巻き付いたスマートウォッチに目を向ける。
「ほんとだ。だいぶ長居してるね。これだけ食べちゃうから待ってて」
網に残っていたハラミを口に押し込んで、ビールで流し込んでいるすみれを見ていると、俺のことを異性として認識しているのか疑いたくなる。
今までの女はデートで絶対に焼肉に行きたがらなかったし、こんな大口開けて肉とビールを流し込むなんて絶対にしなかった。
すみれはこの後俺と寝ると分かっていても焼肉を食う理由は1つだ。
絶対に俺とキスをしないからだ。
どんだけ体を重ねても絶対にキスだけはさせてくれない。
この行動に俺はフラストレーションが溜まっていた。
今日も焼肉を食うと言ったすみれにイラっとしたのも事実だ。
きっと今日も嬉しそうに俺の下で啼くくせに、キスだけは絶対にさせないつもりだろう。
「佐原、行くよ」
満足そうに紙ナプキンで口を拭きながら伝票を手にしてすみれが立ち上がる。
「だから、俺が払うって」
「同期なんだし、払ってもらう意味が分からない」
そう言いながらすみれは伝票に書かれた金額のきっちり半分をレジカウンターに置く。
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